まず最初に、同時通訳と逐次通訳の違いはご理解いただいているとの前提でこの先の話をさせていただきます。「たぶん分かるけど自信がない」という方はこちらの記事を先にお読みください。
仕組みは?
同時通訳ですから、話者の話す言語(例えば英語)を通訳者が同時並行で他の言語(例えば日本語)に訳して聴衆に何らかの通信手段を使って届ける手法です。これをリモート、つまり遠隔地から行うので「リモート同時通訳」なのですが、果たしてこれは技術的に可能なのでしょうか?
まず、従来の電話会議やTV会議の技術では不可能です。これらの技術では二人以上の人が同時に声を発すると声がカブってしまい誰が何を言っているのか誰にも理解できなくなってしまいます(よね?!)
そこでこの問題を解決したのがリモート同時通訳システムです。基本的に上り(マイクからシステムへ送信される音声)と下り(システムからヘッドホンに届けられる音声)を切り分け、更に下り音声を言語ごとに複数チャンネル設け、それぞれの参加者がどのチャンネルの下り音声を聞くか選べるようにした仕組みです。これにより、日本語参加者の日本語オリジナル音声が上りチャネルを介して通訳者の耳に届き、通訳者がその日本語を英語に訳して英語の下りチャンネルに流すと英語の参加者の耳に届く仕組みです。逆に英語参加者のオリジナル英語音声が通訳者の耳に入ると、今度はその日本語訳を日本語下りチャンネルに流すと日本語参加者の耳に日本語が届く仕組みです。通訳者は通訳音声を発する都度、その言語によってどちらの言語の下りチャンネルを使用するかを物理的にボタンを押して(マウスでクリックして)選択することになります。
結果とし、日本人は日本語だけで会話が成立し、相手は(例えばアメリカ人なら)英語だけで会話が成立するのです。
どう使う?
このような仕組みですので、言語の切り替わり(日英↔英日)がほとんど発生しないWebinarなど、登壇者が決められたプレゼン内容を決められて時間内に単一言語で一方的に説明する用途に向いています。もともとこのリモート同時通訳技術は国際会議などのイベント会場で通訳ブースに通訳が入って行う通訳業務を遠隔地から行えるようにする目的で開発された技術なので、Webinarなどはその延長ですから相性がいいのは当然です。
逆に、あまり向いていない用途は一般的な商談や交渉など、小グループで双方向に議論や質疑応答が交錯する状況です。通訳者は頭の中で通訳する方向を切り替えながら同時に言語チャンネルを頻繁に切り替えることになるので、負担は非常に大きいです。
一方、リモートの同時通訳ツールの便利な点は、必要に応じ同時通訳モードと逐次通訳モードを切り替えることができる機能があることです。例えば、2時間の会議で最初の1時間が商品説明など一方向のプレゼンであれば、その時間は同時通訳モードで会議を進め、後半の質疑応答や商談は逐次通訳モードに切り替えることが可能です。更に、その延長線で考えれば、各種講習会やトレーニングなど、講義と質疑応答の状況に応じ同時通訳と逐次通訳を組み合わせる使い方は非常に有効でしょう。
通訳アメリカでは、皆様がすでに日常的に使われているWeb会議ツールにリモートで参加し従来どおりの逐次通訳を提供することも可能ですし、リモート同時通訳のご利用をご希望であれば、専用の同時通訳システムもご用意しております。リモート同時通訳システムをご利用頂く場合は、会議のセットアップと会議参加者の皆様への招待メールの送信は弊社でアレンジさせていただきます。また、上記で記載しましたとおり、同時通訳の場合は通訳2名体制での対応となり、システム利用料も別途発生いたします。詳しくはご相談ください。